東京都現代美術館で開催中の「山口小夜子 未来を着る人展」(6月28日まで)。
このスタイリッシュなチケット、素敵ですよね。手にするだけで心おどったのはいうまでもなく。すでに演出は会場の外からはじまっていたわけで。
2007年にご帰星されたモデル、山口小夜子さんにフィーチャーしたこの展覧会は、先日の記事のガブリエル・オロスコ展と同時開催でした。(ガブリエル・オロスコ展は5月10日で終了)
展覧は「小夜子のブレイン・ルーム」からはじまる。 山口小夜子の遺品を展示するコーナーだ。
台本やカセットテープ、パスポートにまじり、中原淳一のイラストやPLASTICSのアルバム、マンダリンスタイルの衣服をまとったカップルの写真、表紙にスフィンクスやピラミッドなどエジプトの風景写真がはりつけてあったノートなどなど。
彼女のパーソナリティの核を形成したであろう、いろいろなものがひしめいていた。
モデルとしてはあまりにも有名だった山口小夜子さん。
モデルの中でも「別格」「孤高」という雰囲気を醸し、被写体の彼女からはナントナク気圧されるものを感じていました。
が、遺品の数々はシンパシィを感じさせるものが多く、瞬時に親しみを持ってしまった!
↓この写真はミュージアムショップにて
息をのんだのは、写真家横須賀功光さんが撮影された山口さんの写真。 これは資生堂ベネフィークの雑誌広告キャンペーンのためのもので、スタイリングはコシノジュンコさんが担当。
もはやフォトセッションの域を超えていたのでは、と息をのませる写真の数々は「モデルと写真家の一騎打ち」と表され、現場にいたすべての人のはりつめた気持ちも封じている。
写真のネガなども展示され、グリースペンシルで最終的に使う写真やトリミングの指示などがなされている様子にも、心うたれるものがあった。
また、モデル以外にも、さまざまなクリエイティヴな活動をされていたことを紹介するコーナーも。
江戸糸あやつり人形劇団「結城座」とコラボした人形や写真・映像。
小夜子のアトリエというコーナーでは、天児牛大演出のオペラ『三人姉妹』の衣装のためのデッサンや素材。
写真家高木由利子さんと雑誌『ソトコト』で連載していた「蒙古斑革命」のイマジネイティヴな写真の数々。
ちなみに山口さんはこの連載でインタビュアーをつとめていらしたとか。
山口さんが意匠を担当した舞台「リア王の悲劇」(2004年、世田谷パブリックシアター)のコスチュームが8体並び、 向かい合うように並んだ6体の小夜子マネキン(ご自身でリメイクされたデザインだとか)と、声と、影と、音と、照明がおりなす、呪術めいた空間。
谷崎潤一郎の『慇懃無礼』を朗読するパフォーマンスのリハーサルを撮影した映像。
このような活動もされていたのですね。
晩年は「ウェアリスト」(着る人)と名乗った山口小夜子さん。
自らが身につける(空気やかおりなども身にまとう)ものの微かなさえずりを感じ、それらを生かせるよう、活動されていたのでしょうか。
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